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建ててはいけない高断熱住宅⁉

2023.02.09
お役立ち記事
最近、流行りの高断熱住宅。
高断熱住宅と言ってもその内容はピンからキリまで。
今回はその違いと見極め方について解説していきたいと思います。

「えっ、知らなかった」
では済まされない高断熱、高気密住宅の実態についてもお伝えしたいと思います。

 

断熱等級の最高等級4に騙されてはいけない!




なぜ、どこも高断熱なのか?



最近はどこの住宅会社も高断熱って言ってますよね。

なぜ、「どこもかしこも高断熱なの?なにをもって高断熱なの?」と、
お客様からもよく質問を受けるのですが、
それは断熱性能の指標となる「断熱等級が最高等級の4を満たしているから」
という事なんですけど、この断熱等級というのが曲者なんですね。

 


ちなみに耐震等級とは



耐震性能の場合は耐震等級というのがあって、
現行の建築基準法で規定されている強度を
満たしていると等級1
になります。
それに対して1.25倍強いと等級2
1.5倍強いと等級3となって、
耐震等級3ともなると警察署や消防署などの防災拠点となる建物に
相当する強度と言われています。





建築基準法の断熱レベルは?



では、断熱等級の場合、基本となる建築基準法の断熱性能のレベルはどれくらい?
という事なんですけど。

皆さんどれくらいだと思いますか?


実は建築基準法の中に一般的な戸建て住宅の断熱性に関して
規定はありません

断熱材使わなくても家、建てれるんです。

これ、びっくりしません?
犬小屋レベルの断熱性能の家、OKなんですよ。
今の日本の法律。




断熱等級ってどうなの?



「省エネ基準って聞いたことあるんだけどなー」
という方おられると思うんですが、
これ、努力義務の法律で守る必要ないんですね。

で、その省エネ基準というのは、
今か40年ほど前、昭和55年に初めてできたんですけど
その基準に適合すると断熱等級が2
になるんです。

えっ?じゃー、断熱等級1ってどんなレベル?
という事なんですけど、断熱等級1っていうのは、
等級2を満たしていない断熱なんてろくすっぽ考えていないような家が
等級1になんです。


つまり、断熱等級は昭和の断熱されていないような家が
基準になっているんですね。


令和の時代に平成飛び越えて昭和の家と比較して
断熱性能が高いとか言っているのが断熱等級なんです。

ちなみに断熱等級3は?というと平成4年の基準レベル

もう、これ、かなり怪しい基準ですよね。

となると、、、
最高等級4って?不安になりますよね。
その不安的中します。




性能の低い最高等級



断熱等級の最高等級4は平成11年基準レベルなんです。

「えー?!20年前の基準満たして最高等級ってどういう事??」

と思いませんか?

車でも家電製品でも、なんでもいいですけど、
20年以上前の技術レベルを満たしたくらいで
最高水準って表記できるなんて、ありえませんよね。


でも、その基準満たすと、
断熱等級で「最高等級4」と表記できてしまうんです。

そのレベルってもう、当たり前なんですね。
性能ちっとも高くないんです。

国がそんな基準作っているからどこの住宅会社も高断熱って言えてるんですね。

耐震等級は現行の基準法をベースに考えられているので、
最高等級は防災拠点なみの強度と言われていますけど、
断熱等級の最高等級は20年以上前の基準ですから、、、。
全然性能高くないし、全くあてにならない指標なんです。


 

最低基準になるはずだった「最高等級」



更に問題なのは、2020年建築基準法に断熱についてに基準が設けられる予定だったんですが、
先送りになったという事。

ちなみに、建築基準法に盛り込まれるはずだった断熱レベルは
断熱等級4のレベルでした。


建築基準法は安心基準ではなく最低基準を定めた法律ですから、
最高等級4って言っていた性能が最低基準の性能になるってことです。
まあ、最高等級って言っても先ほどお話した通り20年以上前のレベルですから、
それを最低基準として義務化するのはそんなにおかしな話ではないと思うのですが、
問題はここからです。

最低基準になるはずだった断熱性能を等級2,や3などの中間等級ではなく
最高等級4、高断熱と表記できるのが現状です。


もし、高断熱の家を建てたいな?
とお考えならまず、「断熱等級で性能を判断してはいけない」
ということなんですね。

よって、いろいろな住宅会社でご検討されると思いますが
「断熱の最高等級4」を売りにして説明をする会社は要注意です!
絶対に鵜呑みにしてはいけません。
きちんとした基準を伝えしてくれる住宅会社から選ぶことをお勧めします。


 

どんな基準で断熱性能を判断したらいいのか?




「じゃー、国交省の断熱等級があてにならないのらどうしたらいいの?」
ってことなんですけど、

それは「断熱等級ではなく断熱性能を示す指標で判断する」ということです。

 


UA値という指標



これから家づくりをされる方は絶対に覚えておいていただきたい指標が
「UA値」と呼ばれるものです。
断熱性能をしめす指標で、細かい数値で表すことができますので、
このUA値で断熱性を判断するのが間違いないと思います。

ちょっと専門的な言葉ですが、このUA値、日本語で言うと外皮平均熱貫流率と言います。
家の床、壁、屋根などからどれ位熱が逃げていくかという数値で
値が低いほど性能が高いと言えます。

で、先ほどの断熱等級最高等級4のUA値は?というと、0.87という数値になります。



これ私たちが主に建築している島根県出雲市、松江市のエリアのことで、
建物省エネ法で区分けされた地域区分で言う6地域の数値で、
もっと寒い地域は数値がちょっと変わってきますので
ご注意ください。

 



HEAT20という指標



「でも、細かな数値は覚えにくなー」
という方のためにもう少しわかりやすい指標があるのでご紹介します。

いくつかの団体があってそれぞれいろいろな指標があるんですが、
今、最も有名で多くの住宅会社に認知されているのが
HEAT(ヒート)20というところが出している
G1、G2、G3というグレード。
これを参考にすると間違いないと思います。

ちなみにこのHEAT20のグレードをUA値で表すと
私たちが住んでいる島根県のエリアでは

G1・・・・・0.56

G2・・・・・0.46

G3・・・・・0.26

という数値になっていますので
G3が一番高いグレードになります。
先ほどの断熱等級40.87ですから、比較にならない数値ですよね。

 



鳥取県の指標



では次にG1、G2、G3をどのように解釈したらいいのかという事なんですが、
隣の鳥取県が独自の指標として
「とっとり健康省エネ基準」
というのを作って補助金を出しているんですね。
それがこちらの表がすごく参考になるので
この表を使って説明していきます。



地域区分を一つ寒い地域でUA値をだしているので
島根県の出雲、松江よりちょっと数値が厳しくなっていますが、
HEAT20のグレード分けをもとにしてこの表はつくられていると思います。

注意して見ていただきたいのがここなんですが、

G1を最低限レベル

G2を推奨レベル

G3を最高レベル

となっています。
最低限レベルのG1のUA値は0.48です。
先ほどお話しました断熱等級の最高等級4のUA値はなんと0.87です。

これを今は国が最高レベルと認定してしまっているんですから

高断熱どころか低断熱といっていいレベルなんです。

 

「なんで、断熱等級4よりかなり上の性能のG1が最低限レベルのなの?」という事なんですが

次に見ていただきたいのがここです。

欧米のUA値の基準が載ってるんですけど、

アメリカ  0.43

イギリス  0.42

ドイツ   0.40

フランス  0.36

さらにここに義務化って書いてありますから
この数値は最低レベルの基準ってことになるんですね。



そのレベルで見たとき
G1は最低限レベル、
0.46のG2が中間レベルって言うのもうなずけますよね。

 

高断熱住宅と言えるのはG3グレード



で、重要なのはここからです。

G2が中間レベルってことは、普通ということ。
普通の断熱性能を高断熱とは言わないですよね。
ところが国交省の基準では0.87のこのレベルを高断熱って言っているんです。
しかも義務化されてもいない。

こんな状況だから、何でも高断熱になってしまって
消費者が正しい判断ができないようになっているのが
今の日本なんです。

だから、高断熱と呼べるのは中間基準のG2より性能の高い家、
つまりG3レベルでないと正しくは高断熱とは言えないのではないか?

という事です。

昭和の家と比較して、何でもかんでも高断熱というのではなく、
今現在の先進国の住宅レベルで考えないと間違ってしまうという事です。

車に例えるなら今や世界では自動ブレーキが標準となりつつある時代、
日本ではエアバッグどころかABSもついていない車、
ブレーキ性能だけに頼った車を安全性が高いと言って売っているようなものなんですね。
エアバッグなんかついていたらもう最高に安全な車ですねーって、、、
ありえませんよね。


 

なぜ、高断熱が必要か




健康や命にかかわる



2020年の一年間で交通事故で死亡している人の人数は
3000人を切ったそうですが、ヒートショックで亡くなる方は17,000人とも19,000人とも言われています。

ヒートショックというのは、
温かいリビングから寒いトイレや脱衣室などへ行った際に
血圧が変動し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたりすることを言いますが、
これって家の断熱性が悪いのが一番の原因なんです。



 

WHO、世界保健機構は2018年に
冬に健康を維持するために必要な室温を18℃としています。
小さな子供や、お年寄りの場合はさらに暖かい環境を
作ることが必要であると訴えているんですね。

 



イギリスでは、冬場の室内温度の指針が示されていて、
推奨温度は21℃
許容温度が18℃
16℃を下回ると呼吸器系の疾患に影響が出て、
12℃を下回ると血圧上昇、心疾患のリスクが出てくると
言ってるんですね。

アメリカでもニューヨークや、ペンシルバニアなど
様々な州で20℃~18℃の室温規定を
設けていいます。





日本は断熱後進国?



健康維持に必要な暖かさを確保するための断熱性能
どれくらいなのか?という事なんですけど。

先ほど出たUA値で比較すると

イギリスは0.42

アメリカが0.43

ドイツ、040

フランス、0.36なんですね。

日本で高断熱と表記できてしまう数値は0.87。

全然高断熱じゃありません。

これ、全然比較にならないんですよね。

高断熱どころか、かなり低い数値。
欧米と比較すると高断熱ではなく低断熱ですよね。

むかしの家と比較したら暖かいというだけで、決して性能が高いわけではない。

いや、むしろ性能はかなり低いと言っていいと思います。

 

 

まとめ




欧米並みの基準にあわせると



先ほどの欧米の基準と比較すると

最低限必要な性能レベル

HEAT20  G1  UA値  0.58

中間レベル

HEAT20  G2  UA値  0.48

高断熱レベル

HEAT20 G3  UA値  0.28

になるんじゃないでしょうか?

 


建ててしまた後ではもう遅い



ところが日本では必要最低限の性能G1(UA値0.58)も満たしていない

UA値0.87の性能の家を断熱等級の最高等級と表記できてしまします。
ZEH性能もUA値0.6ですからG1に至っていません。

怖いのはそれらの家を高性能と勘違いして
建ててしまうという事です。


断熱性能はこだわらないからという方ならいいですが、
高断熱の住宅を建てたいと思っている方が、
何十年ものローンを背負って高断熱住宅を建てたつもりが
中間の性能、いや、最低限必要と思われる性能すら満たしていない家だったとしたら、、、。


これ、大きな損失ですよね。

住宅は車のように簡単に買い替えできません。

高断熱、高気密の住宅を建てたいと考えている方は
特に注意して断熱性能を見極めてください。