家の寿命を左右する耐久性
木材の腐りを防ぐ防湿施工とは
目次
家の寿命は何年か?
国土交通省のデータによると日本の住宅の平均寿命は30年ほどのようです。
かたや、築100年、150年の古民家も存在しています。
木造という観点で見るならば、神社やお寺などさらに古い木造建築が多く存在しています。
この違いは何によってもたらされるのでしょうか?
外壁がきれいだと家が長持ちする?
「外壁をタイルや、光触媒などの加工をされたものを使えば汚れが付きにくく、メンテナンス費用を抑えられるでは?」という質問をいただくことがあります。
外壁の色あせや、汚れによる対策として塗装をする費用が抑えられるのは事実。
しかし、ここで注意が必要なのはあくまでも外壁の綺麗さが長持ちするのであって、家自体が長持ちするかどうかは別の対策が必要であると言う事です。
先ほどの日本の家の平均寿命30年とは、建替えなどで取り壊されている住宅の築年数から算出された数値です。
築30年前後の家のほとんどは外壁材が張られており、長く建っている古民家や、神社、お寺には外壁材はなく、構造の木部が見えている建物ばかりです。
外壁材が家自体の耐久性を伸ばしているのではなく、むしろ外壁のある家の方が耐久性は低いのです。
家がダメになる原因は何か?
では、一体何によって家の寿命が尽きるのでしょうか?
それは、構造で最も大切な土台、柱、梁などの木材が腐り、耐力を失う事によって引き起こされます。
木材の腐りは白蟻を引き寄せ、更にその被害を拡大させてしまう原因にもなりますので、木材を腐らせないことがいかに重要か分かります。
古民家も神社、お寺も木が腐ることなくしっかりとしているからで残っているのです。
木材が腐る原因は何か?
なぜ、木が腐るのでしょうか?
その原因は腐朽菌という菌が繁殖することによって、引き起こされます。
この菌が繁殖しないようにすることが重要な対策となります。
菌が繁殖するのに必要な条件は、栄養分、酸素、水分の3つ。
この3つのどれかを断つことができれば菌の繁殖を防ぐことができるのですが、木材自体がすでに栄養分であり、地上に建てる以上、酸素も断つことがことはできません。
残されたのは水分。
この水分を断つこと、つまり木材を濡らさないことが鍵になります。
構造の木材が濡れる原因となる結露を防ぐ
木が腐ってしまう原因の多くは結露によるものです。
サッシなどが濡れる室内側で起きる結露ではなく、壁の中で発生する結露です。
なぜ、壁の中で結露が起きるのでしょうか?
温度と湿度は高い方から低い方に流れる性質があり、特に冬は温かく湿った室内の
空気が冷たく乾いた屋外の方へと移動していきます。
湿気は室内の石膏ボードを貫通し、壁の中に入り、外壁付近で冷やされ結露を生じさせます。
この壁の中の結露を防ぐために重要なのが防湿・気密のためのフィルム施工。
室内側にフィルムを施工することによって湿気を多く含んだ空気が壁の中に入ることを防ぎます。
防湿を考慮していない気密は意味がない
気密性を高めるために外部に面したボードの穴をふさぐ気密施工は空気の出入を防ぐこと(気密)はできても防湿はできません。
防湿は室内側から壁の中に湿気を入れないために行うので外壁側ではなく室内側にフィルムによる気密施工が必須となります。
空気だけでなく湿気も室内から漏れないようにすることが本来の気密施工です。
防湿も兼ねた気密施工が壁の中の結露を防ぎ、建物の耐久性を高めます。
新築時の施工精度が大きく影響する
耐久性を左右する木材の乾燥状態。
その乾燥状態を左右する施工は、、、。
外からの雨水が壁内へ浸入するのを防ぐ外壁の裏側の防水施工。
室内から湿気がかべの中に入らないようにする室内側の防湿施工。
外部からの電線の引込みや、エアコン、換気扇の取り付けのために壁に穴を開けた後の部屋内側の防湿と外壁側の防水処理。
構造を湿気させないためには、これらの施工の精度が重要なのですが、その施工の状態、劣化状況は完成後の定期点検などで確認することができません。
なぜなら、そこを確認するためには壁をはがさないと見ることができないからです。
何か問題が発生したときに壁をはがし、「こうなっていたんだ」と状況がわかり、それに対して対策を施すしか方法はないのです。
つまり、耐久性を左右するのは外壁材の部材や維持管理もさることながら、そのほとんどは新築時の施工、品質管理にかかっていると言えます。