家と健康のこと

寒い家にひそむ深刻なリスク

「寒さが死に直結する」と聞いてどう思いますか?
特に日本人は、暑さ寒さは「我慢するもの」という認識が強いことや、子供のころからそうしてきたという経験などから、屋内が寒いことにあまり意識を払わない方が少なくありません。
しかし近年の研究から、家の寒さは思った以上に深刻な影を生活にもたらすことが明らかになり、自治体が動くほどの事態になりつつあります。いったい、寒い家に住むことでそのようなリスクがあるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

人は「寒さ」に
弱い生き物。

令和4年の交通事故死者数は2610人と統計開始以来、過去最少を記録。それに対し、ヒートショックによる死者数は厚生労働省の推計によると1万9000人にも及びます。

加えて様々な気温での死亡リスクについての研究調査が、世界五大医学雑誌の一つとして知られるイギリスの
『ランセット』に掲載されました。12カ国の研究機関が日本を含む世界13カ国384都市で過去28年間に死亡した約7400万人のデータを収集し、調査した結果、全死亡者の7.7%(約572万人)が亡くなった際に気温が関係したと推定され、その大半は低気温に関係する死亡であることが明らかとなりました。
極端な高温による死亡者数は全死亡の0.5%未満となっており、人は暑さよりも圧倒的に寒さに弱いことも明らかにされています。

日本人年間120万人の全死者のうち、9.8%約12万人)が温度低下による影響で亡くなっていると言われています。

冬の死亡増加率が全国一低いのは「北海道」

慶應義塾大学伊香賀教授らの研究によれば、冬の死亡増加率は北海道が一番低いということです。もし、家の性能ではなく冬の寒さが原因であれば一番寒い北海道の死亡率が一番高いはず。
断熱性能が高く、全館暖房をしている冬の北海道の家は他の地域の家より暖かい、という事は多くの方が知るところ。
つまり、外がいくら寒くても家の中が暖かく、体を温めることができれば寒さによる健康リスクが大きく軽減されるという事が明らかにされています。これと同じような調査結果が日本だけでなくヨーロッパにもあります。

2015年英国保険省の発表によると、冬の死亡増加率が温暖なポルトガルが28%だったのに対し寒冷なフィンランドは10%と温暖なポルトガルの3分の1と少なく、寒さ対策ができている地域の方が健康リスクの少ないことが判明しています。

冬の死亡率が低いのは北海道 札幌時計台の写真

アトピーや
喘息などの
アレルギーも改善される

様々な研究結果や世界の基準を見ると、暖かい家は人の命と健康寿命を延ばすことが明らかになっていますが、それだけではありません。

今や多くの方が苦しんでいるアレルギー疾患。暖かい家に住むことによって、アトピーや喘息などのアレルギー疾患が改善されているという研究結果もあります。

住むほどに健康になる家、その恩恵。

健康であることは、幸せな人生を送るうえで不可欠の要素。また経済面の恩恵も見逃せません。自身だけでなく家族の負担と医療費も軽減されます。

「健康維持がもたらす間接的便益を考慮した住宅断熱の投資評価」(2011年)という論文によると、高気密高断熱住宅に住むことによる医療費軽減や、疾病に伴う休業による所得損失予防による便益は中所得世帯で年間27,000円という試算結果が公表されており、高気密高断熱住宅に住むことによっての経済的な効果が、光熱費の削減だけでなく健康維持という側面からも明らかにされています。

住むほど健康になる家の写真